夜・文章講座、第3回の例文。2012/02/10 22:07

夜・文章講座
小説の基礎篇Ⅰ―視点・人称・語り
講師 葉山郁生(作家)

第3回 2月20日(月)午後6時30分~

●語りの問題(語り手はふつう、複数の登場人物に寄り添うが、さらに人物の生死の外に立てる)
●教材=コンラッド「闇の奥」(岩波文庫他)

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●課題=2回目の「三人称小説」に「総合的語り手」の視点を加える(主人公または他者に、その人生全体、自己なき後の世の話題を語らせてみる)

 第三回目の課題について、少し解説しておきます。第三回目の視点や語り手についての問題意識です。
 三人称であれば、主人公や登場人物が死んだとき、視点は語り手に移行します。歴史小説やハリウッド映画の主流の視点は、今なお「神の視点」です。(一)の司馬遼太郎「竜馬がゆく」の最終の文章が、そうです。(二)の太宰治「走れメロス」の文例の最後も、主人公メロスを越えた語り手が、語っています。現代小説の「0の視点」を含め、精しいことは、第三回目の授業で話しますが、(一)(二)を参考に、課題文を書いてください。

(一)天が、この国の歴史の混乱を収拾するためにこの若者を地上にくだし、その使命がおわったとき惜しげもなく天へ召しかえした。……しかし、時代は旋回している。若者はその歴史の扉をその手で押し、そして未来へ押しあけた。

(二)急げ、メロス。おくれてはならぬ。愛と誠の力を、いまこそ知らせてやるがよい。風態なんかは、どうでもいい。メロスは、いまは、ほとんど全裸体であった。呼吸も出来ず、二度、三度、口から血が噴き出た。見える。はるか向うに小さく、シラクスの市の塔楼が見える。塔楼は、夕陽を受けてきらきら光っている。
 …………
「それだから、走るのだ。信じられているから走るのだ。間に合う、間に合わぬは問題でないのだ。人の命も問題でないのだ。私は、なんだか、もっと恐ろしく大きいものの為に走っているのだ。ついて来い! フィロストラトス」
 …………
 最後の死力を尽して、メロスは走った。メロスの頭は、からっぽだ。何一つ考えていない。ただ、わけのわからぬ大きな力にひきずられて走った。

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●教材作品は読んでおいてください。
●課題作(原稿用紙2枚《ワープロの場合、A4用紙をヨコにしてタテ書き印字》)を、講座日の5日前までに、担当講師宅へ郵送のこと。提出作品はコピーして、皆で読みあいます。(一般の方などで講師宅の住所がわからない場合は、事務局まで問い合わせてください)